こんばんは、都内で13園の小規模認可保育所を経営する、中小企業のおっさんの駒崎です。
今日は、ネット上でバズっている魂の叫びに、保育園現場から、また政府の審議会委員の立場から答えたいと思います。
【魂の叫び「保育園落ちた日本死ね!!!」】
ある保育園入園審査に落ちた方の、ネット上の魂の叫びが、さざ波のように広がっています。
「保育園落ちた日本死ね!!!」
http://anond.hatelabo.jp/20160215171759
分かる、分かるよ。何が一億総活躍社会だよ、と。私活躍できないじゃん、と。その通り。
じゃあ、政府は何もしていないのか?
【実は保育所数は劇的に増えてるけど、待機児童は減ってない】
20年くらい前から少子化懸念が高まって、政府は待機児童対策をしてきましたが、あまりお金は使ってきませんでした。
遅きに失した感はありますが、ようやく消費税増税の一部を使う、という財源のメドをつけて、昨年4月から「子ども子育て新制度」という待機児童問題にガチで取り組みますよ、という方策を打ち出しました。
(実際は新制度を見越して、1年前倒しで、園づくりを加速させました。)
ということもあって、平成25年度あたりからグンと保育の拡大量が伸びました。
しかし、認可保育所に申し込む人が増えたこともあり、待機児童は減らせず、むしろ若干増えている、という状況なのです。
(内閣府子ども子育て会議資料より)
この2月の入園結果は、まだ統計には組み入れられていないので、確たることは言えないのですが、おそらく今年も状況は昨年と似たようなものではないか、と想定されます。
【もっと保育所つくって、待機児童減らせば良いじゃん?】
ここで疑問を持つ人も多いでしょう。認可保育所に申し込む人が多かろうが、それ以上に保育所つくれば良いじゃんか、と。
その通りです。しかし、そんなに機動的に保育所をつくれない、3つの要因があります。
1.予算の壁
2.自治体の壁
3.物件の壁
【予算の壁】
待機児童の多い都市部においては保育士不足です。これによって、開園に大きくブレーキがかかります。
保育所は一人でも保育士が欠けたら、法令違反で開園できません。よって、「保育士を採用できた数」が開園数上限になります。
保育士不足は保育士の処遇が低いことが要因です。
保育士給与は全国平均で月20.7万円。(出典:http://bit.ly/1HwTytD)
全産業平均と比較して、月額10万円程度低い。
しかし、政府はこの保育士の処遇改善の予算をわずかしか取っていません。
月額1万円を上げるのに340億円、全産業平均値まで上げるのに3400億円を予算として積みませば、保育士処遇は改善し、開園スピードは大きく早まります。
【自治体の壁】
自治体がブレーキ役になっています。パン屋であれば、好きな場所に何軒でもつくれます。
しかし、保育所は認可制になっており、自治体が計画を立てているので、
「このエリアとこのエリアに2箇所ずつ作る予定なので、他の場所につくってもらっちゃ困ります」
ということを言ってくるわけです。
(参照:待機児童増加の、意外な犯人はhttp://bit.ly/1M6kXyN)
また、自治体が独自の無意味なルールを勝手につくって、それが参入障壁を上げています。
例えば杉並区は、小規模認可の園長基準に「6年間『継続して』保育業務に携わった経験」を求めています。半年でも業務を離れたらアウト。育休も取れないことになり、馬鹿げています。
なぜこうした事態が起きるかと言うと、待機児童の常態化によって、「待機児童が解消できなくても、担当者の評価はマイナスにならない」ためです。一方で、保育所で事故や突然の事業者撤退があり問題になると、評価に大きく影響します。
すなわち、自治体(と担当職員)からすると、園を増やそうというインセンティブよりも、間違いのない事業者を選別する方が強い動機となり、参入を抑制するのです。
【物件の壁】
保育所は二方向避難路の確保や新耐震基準を満たしているなど、安全に運営するために必要な要件がどうしても多くなります。それを満たしていて、かつ周辺住民が文句を言わず、かつ保育所としてペイする坪単価で、駅からの距離がそこまで遠くない物件というのは、非常に限りがあります。
少子高齢化で子供が減っているのになぜ、待機児童が増えているのでしょうか?
なぜ保育園に子供が入れない待機児童が問題が深刻化しているのでしょうか?
答えは簡単です。
女性が働かなくてはいけないほどに、大衆が貧窮化させられたからです。
「子供を家族から手放さずにいられない社会になった。」ということです。
それが、待機児童問題の根源です。
つまり悪いのは保育園が少ないことではありません。保育園を増やしてもなんら育児問題は解決しません。
「子供との時間」を、「労働しなければいけない時間」へと変えられてしまった、これが問題なのです。
このことに言及せずに、「待機児童ゼロ」とか「保育園を増やそう」とか言っている者は、思考の抽象度が低い盲目か、それらをわかった上で資本システムに乗っかって利益を取ろうとしているかでしょう。
記事の中で「輝けない。」との文言が出てきますが、「働くことを、輝く」と、したいのは支配者層都合です。
我々の幸福とは一切関係がありません。
働くことも、子育てすることも各々が自由に選べる社会でなくてはいけません。
しかし、「働くことが、輝くことである。」という常識を敷設しようとしています。
子供との時間は、輝いていないのでしょうか?
つまり、「労働することは輝くことだ」というプロパガンダで、貧窮化を正当化しているわけです。
添付記事は業者目線です。「どうしたら保育園が増えるか?」という視点でしか捉えていません。
子供にとって一番良いのは「保育園に入れて両親が働くこと」ではなく、家族が子供につきっきりでも家計が回ることなのです。
つまり、待機児童問題の一番の対策は、一家で一人働いていれば家族みんなを養える経済状態にすることです。
「お父さんでもお母さんでも一人働けば、おじいちゃんおばあちゃんも含めて家族を養える。」そのような状態にすることです。
そうすれば、待機児童はいなくなります。
これはたかだか数十年前、以前の日本の状態を私は言っているに過ぎません。
待機児童問題とは、保育園の枯渇ではなく、貧窮化が原因なのです。
保育士が足りないのではなく、母親が子供の面倒を見られないほど働かされているのです。
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本日もお疲れ様です!
これは先日の記事ともつながっていますね。
子供を産み、育てるのは人間として自然なことであり、誰の許しがなければいけないなんてことはないのに、それを満足にさせてもらえないような常識、経済にとらわれてしまうのは悲しいですよね。
子供を産んで家庭を持てたとしても、「私は子供と向き合います!」と強く覚悟でもしないと、日々のことに追われ、子供とまともに向き合う時間すら取れないなんておかしなことですし、憤りを感じます。
もはやこうなっては、家族だの他人だの言ってないで、助けをもっと求めやすい、みんなで子供に愛を注げる。そんな雰囲気の社会にするしかないです。そういう社会じゃないから若い親が苦しみ、子供が死んでしまうのですね。